Collection Project Product Episode
Contact

main_img
EPISODE #02
AUTUMN / WINTER 24
Unexpected
EPISODE #02AUTUMN / WINTER 24
main_img
main_img

連日パリで行われている熱い戦いのニュースを横目に、日本ではジリジリと肌を焦がすような暑さと戦う日々が続いています。そんな裏では歴史的な株価の暴落だったり、アメリカのリセッションなどの報道に胸がざわざわする人も多いのではないでしょうか。偉業を達成することも、資産を守ることも最後は自分の努力と責任なんだということを改めて感じさせられるこの頃です。いつの時代も自分の身は自分で守るしかないのです。

さて今回は敵の目を欺き、自分の身を守るために誕生したカモフラージュ柄のお話しです。時代の変遷とともに様々なシーンで多種多様な迷彩柄は作られてきました。昔から、柄に柄を重ねてあったり、多色を用いた迷彩柄はあるけれど、アートとアートを融合する迷彩ってないんじゃない?そもそもこれは戦いの場に出るための迷彩じゃない。そんな発想からAW24シーズンのカモフラージュ柄は誕生しました。

ANDY ANDY
main_04

今シーズンのカモフラージュ生地はコットンウェザーにシルクスクリーンで柄をプリントしています。テクノロジーの進歩によってインクジェットプリントではより緻密な表現ができるようになりましたが、シルクスクリーンプリントにはアナログならではの個性があります。版を置くこと、その上から染料をのせて刷ること、作業のひとつひとつに人の手が介在しますから、機械では起こらない数ミリの版のズレや、染料を刷ったあとにもほんのわずかなムラ感がでる。そして、圧をかけてプリントをしているので、生地によっては柄が裏側に透けてしまいます。

この生地を製作するにあたり「表裏で異なる柄をお互いに干渉し合わないようにシルクスクリーンでプリントできないか?」という目標を掲げてトライしてみました。結果としては失敗。プリントが透けて表裏の柄がモロに干渉してしまいました。でもそれが予期せぬ面白さを持っていて、「透けてしまうことを逆手に取ったら、より複雑な迷彩柄が作れるかもしれない」という新しい目標へと向かうヒントになりました。

main_04

制作の中で突如浮かび上がったのが、〈アンリ・マティス〉と〈アンディ・ウォーホル〉の存在です。マティスは、芸術それ自体の価値を信じており、自らの芸術が人々の精神の疲れを癒す良き「肘掛け椅子」のような存在であることを望んでいました。そして、20世紀のポップアートを代表するウォーホルが心から望んだことは「マティスになりたい」だったとか。迷彩柄と向き合っていると、マティスの晩年の表現手法であるカットワークにシンクロニシティを感じてきました。そこでマティスの作品に敬意を込めて実際に色紙を切りながらアナログな手法で柄を作ることにしました。

偉大な二人の芸術家へのオマージュとして制作した柄を表裏にプリントしたこのカモフラージュ生地は挑戦と失敗の賜物です。アートやファッション、もしかしたらスポーツやビジネスの世界でも新しさを求める時にはセオリーから逸脱することが必要なのかもしれません。予期せぬ出来事も捉え方一つで結果はポジティブにもネガティブにもなるという学びを得た思い出深い生地制作となりました。

main_04
main_04