AUTUMN / WINTER 24
待ちに待った、というか待ちくたびれたくらいですが、ようやく秋の訪れを感じられるようになりました。そんな最中にiPhone最新機種が発売していましたね、早いもので16世代だそうです。初代iPhoneの発表で受けた衝撃もまだ記憶に新しいですが発売は遡ること17年、2007年のことでした。それまで主流だったハードウェアキーボードを一切排除した完全なタッチスクリーンのデザインは革新的なもので、『キーボードなしでは正確な入力が難しい』と、発売当初、市場は懐疑的でした。それも今となっては世の中の主流となり、直感的でスムースなインターフェースを生み出したスティーブ・ジョブズの功績が讃えられています。
さらに時代を遡って1958年。この年に初めてギブソンがフライングVギターを製品化しました。このギターも一般的なギターと異なりとても奇抜なデザインだったことから世の中に浸透せず、一時は生産中止になったとか。それでもDave Davies、Michael Schenker 、Keith Richards、Marc Bolan、そしてJimi Hendrixなど、個性豊かなギタリスト達が愛用したことで世の中に受け入れられていったというストーリーがあります。無意識的にスタイルをつい追いかけてしまうギタリストたちの多くはフライングVを使っていたからか、あの特殊な形状を洋服に落とし込みたい衝動に駆られました。
今シーズン、いくつかのトラウザーでバックスタイルに象徴的なV形状をモチーフにしたディテールを取り入れました。ギタリスト達から得たインスピレーションと掛け合わせたのは対極なイメージのフォーマルウェア。裾に前後差をつけたモーニングカットの要領で、バックヘムをV字にカットしました。生地が溜まるフロントと相反して、バックスタイルは着用することでVカットが自然と開きます。踵で裾を踏むことなく着用できる機能美は嬉しい副産物でした。こうして、フライングVギターの美しい立ち姿は今シーズンを象徴するトラウザーのディテールとして昇華されたのです。
今までに無い形状なので最初は抵抗があるかもしれませんが、見慣れないデザインのフライングVギターを扱ってきたアーティストたちのようにまずはお試しください。きっと気付いたら皆さんの個性の一端を担う欠かせない相棒になってくれるはずです。