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EPISODE #05
SPRING / SUMMER 25
From Gear to Garment
EPISODE #05 SPRING / SUMMER 25

アウトドアウェアやミリタリーウェアというのはいわゆるファッションウェアとは異なり、想定される環境下で人々を守るための機能を最優先させる洋服は道具、あるいは装備としての側面が強く、それゆえに素材やパターン、あるいは縫製の技術革新はものすごいスピードで進化し続けています。

そういった用途がはっきりとした洋服に使われるテクニカル素材は最先端の技術が取り入れられ、新たなプロダクトを追いかけていくこと自体すごく興味深くて面白いわけです。技術革新に比例してより軽量で多種多様な機能が備わったり、がさがさとしたテクスチャーも限りなくスムースに近づいていたり。パターンだって生地に対して無駄がないようにAIが設計してくれたりだとか、レーザーや超音波で裁断したり縫製したりなんかで、洋服を“縫う”という概念すら変わってきています。

それでもそれらをファッションとして考えた時に、動きやすさを第一に考えられたシルエットは若干タイトで遊びが足りなかったり、普段着としてのスタイリングのバランスにちょっと違和感が生じたり、もうちょっと着るときの楽しさが欲しかったりと感じることがあるのも事実です。そんなこともあって、いつか3レイヤーのテック素材を使って自分たちらしいアウトドアシェルを作りたいなぁと考えていました。探しものは思いがけないタイミングで見つかるもので、理想的な生地と工場との巡り合わせにより思い描いていたNICENESSらしいテクニカルウェアは導かれるように形になっていきました。

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生地は、最先端のゴアテックスももちろんいいけれど、それだとなかなか思い描くシルエットを生み出しづらいこともあって、90年代から2000年代初頭にかけて軍用として使用されていたものを採用しました。ちょっと硬さが残っていて、がさっとしたテクスチャーがあるもの。それでいて透湿防水の機能は申し分のないもの。その時代の生地であれば、適度な硬さがある分、立体的なシルエットが作りやすく自分たちの思い描くものを実現しやすかったんです。

生地と同じく、デザインも90年代から2000年代くらいのムードを踏襲しています。生産性を考慮するとより少ないパーツで構成するのがベターですが、このジャケットを構成するパーツ数は60を超え、シームにはこれでもかというほどテープを圧着させて防水性を担保しています。シームテープの圧着には人の手が介在するわけで、パーツ数が多い分、たくさんのテープを貼る必要があります。工場の方達には大変な苦労をかけたと思います。

色々と機能面やデザインの部分でも語りどころはありますが、このプロダクトの用途は着て楽しんでもらうこと。機能性を持たせたテクニカルウェアだけれど、あくまでもファッションとしてのアプローチで自分たちらしいプロダクトになったんじゃないかとその出来に満足しています。

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