
AUTUMN / WINTER 25

「芸術とは現実を模倣するものではなく、フィクションを真実にする力である」 。レオナルド・ダ・ヴィンチの思想体系を記述した文献にあったこのことばが、AW25シーズンのコレクションの軸になっています。
ダ・ヴィンチは宇宙人だったのではという逸話が生まれるくらいに、彼の想像力は桁違いだったそうですが、人間が想像できることは現実になる、あるいは、芸術によって新しい世界が構築される、そんなことを純粋に信じて疑わなかったのでしょう。彼は、ライト兄弟がまだ飛行機を作り上げていないずっと前に飛行機らしき物体の絵を描いていたり、ドローンなんてもちろん存在しない時代に航空絵図を描き上げていたりと、今も解明されていない謎が詰まったスケッチを描き溜めたノートを残しています。



このシーズンの構想を練る間に久しぶりに踏んだアメリカの地。中でもロサンゼルスのダウンタウンから車を走らせたロードトリップの最中に、レオナルド・ダ・ヴィンチのこの思想と、アメリカのハリウッドのようなフィクションを作り出す世界のことを思いました。子供の頃に観たSF映画が作られた土地やその周りに広がる砂漠、その道中に聴いていた古き良き時代のアメリカ音楽。
今見ている世界と自分の記憶にあるアメリカの風景に隔たりがあったりして、自分がどこを旅しているのかわからなくなるような不思議な感覚がありました。空想と現実、時代背景もぐちゃぐちゃに色混じった世界を絵にしてみたいなと、僕たちは子供のように想像を膨らませながらアメリカの土地を描き起こしました。



UMAにUFO、デロリアンにテスラなど、現実世界と空想世界が入り混じる楽しい世界。その絵を表現する手法としてシルクスクリーンを用いました。インクジェットにしてしまえば、絵に描いたものは綺麗に表現できるのですが、色にならない色、想像の及ばない偶然性のある昔ながらの方法で、1版ずつ色を重ねていくことにしました。映画も技術の進歩によって色々な空想をリアルに表現することができるようになりましたが、色々な試行錯誤をしながら人の手によって生み出されていたあの頃のSF映画は今も色褪せることはありません。


この空想世界を表現するにあたり、シルクスクリーンの職人を訪ねました。たった一人、ただただ孤独に大きなシルクスクリーンの版の前に向かい、黙々と作業を続け、1色、また1色と塗り重ねていく。その姿は歳こそ若いものの、職人という言葉がよく似合います。13にも分けられた版を、湿度や気温、気候の具合を考えながら重ねていく。シルクスクリーンプリントは一息に作業を進めなければ、作り出した色は微妙に表情を変えてしまう。その日のうちにやると決めた数は必ず1日のうちに終えなければなりません。
これほどまでに手のかかる繊細な作業を目の当たりにしすると一層このプリントに愛着が湧いてきます。デジタル全盛の時代において、人の手によって生み出されるものの価値は一層高まっています。この昔ながらの手法とこの絵の世界観が、未来で出会う数奇ものたちの想像力と創造欲を掻き立ててくれれば本望です。
























































