
SPRING / SUMMER 25
諸説あるうちの一説として、バンダナの起源はインドにあるとされています。ヒンディー語の「बन्धन(bandhan)」を語源とし、「結ぶ」あるいは「縛る」という意味を持つ言葉だそうです。僕たちは人の手の跡の残る技術を追いかけてインドに辿り着き、そこに残る貴重な生産背景を使って共にものづくりに取り組んできました。そこで出会ったインドという国と僕たちの住む日本という国を結ぶような、あるいはインドから渡り20世紀前後にファッションとして定着したアメリカのカルチャーと今の日本のカルチャーを結ぶようなバンダナを用いたプロダクトをつくりました。
一般的なバンダナは1辺が60cm前後のサイズですが、インドでは180cm四方のサイズを1版で手捺染することができる背景があることを知りました。その1版に1枚の絵を描くようにオリジナルのバンダナ柄を表現できたらきっと見たことのないものが出来上がるはず、とわくわくしながら絵柄を描き始めたわけです。60cm四方サイズの絵柄を180cm四方のサイズに拡大してもよいのですが、キャンバスが大きくなるとヴィンテージのバンダナにあるような点描の繊細さに欠けます。ということで180cm四方の大きなサイズに、通常のバンダナサイズと同じくらい細かな描写で絵柄を描くことにしました。


バンダナの外周はアメリカ製のヴィンテージバンダナに見られる伝統的な絵柄であるペイズリーやクッキー柄を軸に構成しています。基本に忠実にデザインを進めながらも様々な地域、年代のものを参考にしながら動物を抽象的に描いたりとオリジナリティを加えていきました。そして内側には着物の絵柄として用いられる葵文様、笹蔓文様、羊歯文様、雲文様など日本の伝統的な植物文様と鳥のモチーフを配置しています。その2つの間を葉で結び、双方の繋がりを表現しています。
今シーズン、インドでは手捺染の大判バンダナNAIRを用いて2型の洋服を製作しました。この大きなバンダナのサイズとその柄を活かしたいという思いから裁断箇所を極力減らし、折り紙のように服を仕立てることにしました。そうして生まれたのが直線的なパターン構成のスモックパーカDASとトラッカージャケットGYANです。それぞれ一枚の大きなバンダナNAIRから出来ているんです。折ったり、つまんだりと正方形のバンダナを無駄なく洋服に仕立てるディテールをぜひ店頭で広げて見てみてください。


日本ではタテ糸にシルク、ヨコ糸にコットンを用いた交織ローン生地に同じ柄をシルクスクリーンプリントしました。こちらは少しドレッシーなイメージでスカーフのCHAO、スカーフタイのPATをつくりました。また、スカーフサイズのCHAOを6枚用いたシャツJAMETもご用意しています。こちらも正方形の布を組み合わせて洋服に仕立てる面白さがあります。直線を際立たせた構造で、それもまた着物の成り立ちに似ています。今シーズンのバンダナシリーズはインドにもアメリカにも、そして日本にも属さないけれど、全ての国と伝統にリスペクトを込めています。
