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EPISODE #20
SPRING / SUMMER 26
Shared Memories in Motion
EPISODE #20 SPRING / SUMMER 26
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音楽が鳴る場所に、人は自然と集まる。フロアでも、野外でも、祭りでも。

流れている音楽やそこに集まるオーディエンス、場所や時間帯が違っていても、人が身体を揺らす場所にはどこか似た空気が流れている。NICENESSが始まるおおよそ20年前、僕たちはロンドンに居た。なけなしの生活資金を切り崩してハイドパークで開催されたO2 Wireless Festivalに行った。当時、誰が言い出して、どのアーティストを目当てに行ったのかは思い出せない。それでも巨大なサウンドシステムから放たれる音圧と光の中で、無数の身体が一つの波のように揺れていく光景は今も鮮明に覚えている。

H.ROLLO H.ROLLO
H.ROLLO

ダンスミュージックの現場には、いつも独特の高揚がある。理屈ではなく、会場全体で共有されるリズムが群衆を一体にしていく感覚。その光景に、どこか既視感のようなものを覚えた。思い返されるのは幼い頃に浴衣を着て行った日本の夏祭りの夜だ。提灯の灯りの下で、人が集まり、輪が生まれ、太鼓の音に合わせて身体が揺れる。

普段は交わることもない老若男女が浴衣というドレスコードと、地域に根差した太鼓のリズムで一体となる。ある種のトランス状態で無心で踊る様子はヨーロッパで見たレイブカルチャーに通ずるものがある。

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ANDY ANDY

今シーズン制作したTシャツ ED は、そんな異なるダンスカルチャーのイメージを重ね合わせている。モチーフの出発点は、1990年代の音楽カルチャーを象徴するレコードジャケットの視覚言語。そこに、日本の夏祭りの群衆の風景を重ね、コラージュ感覚でひとつのイメージを構成した。サイケデリックな色彩は、職人がエアブラシによるステンシルプリントで重ねられる。インクの圧力、距離、わずかな動きの違いによって、発色は均一にならない。色は滲み、境界は曖昧。同じステンシルを使っていてでも、仕上がりは微妙に異なる。

ANDY ANDY
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この色彩の感覚には、もう一つの背景がある。幕末から明治にかけて生まれた「横浜写真」 と呼ばれる写真文化だ。当時の写真はモノクロだったが、そこに職人が手作業で色彩を施していた。遠い国の風景を、より生き生きと伝えるために。記録でありながら、どこか演出された色。現実と想像のあいだに生まれたその視覚表現は、百年以上の時間を経ても色褪せない。

過去の記憶と現在の視点が交差する場所を表現した色と群衆のイメージ。音楽の記憶、祭りの熱、異なるカルチャーのリズムを一枚のTシャツの中で表現した。

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