EPISODE #23
AUTUMN / WINTER 26
Outside the Algorithm
EPISODE #23 AUTUMN / WINTER 26

今からちょうど50年前。1976年9月20日と21日、ロンドン・オックスフォードストリートにあるライブハウス「100 Club」で“Punk Festival”が開催された。Sex Pistols、The Clash、The Damned。当時はまだ無名に近かった彼らが同じステージに立ち、イギリスの若者たちは、それまでとはまったく違う価値観に熱狂していく。

“Anarchy in the U.K.”

パンクが叫んだ「アナーキー」は、単に社会へ反抗することではなかった。既に用意された価値観の外側を歩こうとするアティチュードだったのだと思う。もしマルコム・マクラーレンがこの時代に生きていたら、彼は何に抗っただろう。たぶん国家でも、大人でもない。アルゴリズムだった気がする。

今の僕たちは、気づかないうちにアルゴリズムの内側で暮らしている。音楽は好みに合わせて選ばれ、映画も本も、洋服までも「あなたへのおすすめ」として画面に並ぶ。便利になった一方で、自分では選ばなかったものと出会う機会は少しずつ減っている。アルゴリズムを否定したいわけではない。僕自身、その恩恵を毎日のように受けている。ただ、新しいカルチャーは、いつもその外側から生まれてきた。

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マルコム・マクラーレンが面白かったのは、新しい服をつくったことではない。服が持っていた意味を書き換えたことだった。本来なら労働者のためのワークウェアや、英国の伝統を象徴するニット、格式あるテーラリング。それぞれ異なる歴史や役割を持つ服を、あえて同じ身体の上に重ねる。そうすることで、服はもともと与えられていた文脈から解放され、新しい意味を獲得していった。

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今シーズン、デザイナーが制作の出発点にしたのも、その感覚だった。1920〜60年代のアメリカやイギリスのハンティングウェアに見られる合理的な構造。そして1930〜60年代のワークウェアに刻まれた時間の痕跡。それらを忠実に再現することではない。異なる時代に生まれた知恵を、現在の方法で組み直すことだった。その発想を象徴するプロダクトの一つが、この転写ストライプシリーズである。

一見すると、生地は長い年月を経たヴィンテージのように見える。擦れ、色褪せ、折り目、使い込まれた痕跡。しかし、その時間は実際には流れていない。それらはすべて、緻密に設計されたプリントによって生み出されている。画面で見れば、きっと古着に見える。でも手に取ると、その認識は静かに裏切られる。そこにあるのは、時間を重ねた服ではなく、時間という概念そのものをデザインした、新しい服だった。

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モバイルの画面に広がる世界は、効率よく情報を届けてくれる。けれど、服の重さも、質感も、身体の上で生まれるドレープも、そのすべてを伝えることはできない。画面は服を見せることはできても、服を体験させることはできない。だからこそ、この服は画面の中では完成しない。触れること。着ること。身体を動かすこと。その瞬間に初めて、プリントと織りの境界が曖昧になり、ヴィンテージだと思っていたものが、新しい価値として立ち上がってくる。

効率を求める時代は、答えを早く見つけることに長けている。一方で、身体はいつも少し遠回りをする。触れてみる。袖を通してみる。歩いてみる。その小さな時間の中でしか分からないことが、服にはまだたくさん残されている。

“Old is new again.”

それは過去へ戻ることではない。デジタルによって失われつつある身体性を、もう一度ファッションの中に取り戻すこと。アルゴリズムの外側へ一歩踏み出したとき、新しい価値は案外、昔からそこにあったものの中に見つかるのかもしれない。