The Long Becoming by piczo
AW26 CAMPAIGN















































































































































The Long Becoming by piczo
自然は直線を描かない。
海岸線は蛇行し、岩肌は裂け、風は予測できない軌道を描きながら島を吹き抜ける。スコットランド北西部に位置するスカイ島では、あらゆるものがわずかに歪み、均整から外れている。北大西洋から吹き込む風は、長い年月をかけて島の輪郭を書き換えてきた。切り立った断崖、ねじれるように続く稜線、侵食によって生まれた奇岩群。その風景は劇的でありながら決して人工的ではない。自然は完璧な形を目指さず、風雨と時間の積み重ねによって独自の表情を獲得していく。
かつてこの島には海を渡る人々が行き交い、またある時代には故郷を離れざるを得なかった人々が去っていった。歴史は断片となり、記憶は土地の中へ沈殿していく。残された風景は雄弁である。削られた岩肌や朽ちた石積みは、失われた時間の存在を静かに語り続けている。霧は境界を曖昧にし、湿度は素材の質感を浮かび上がらせる。風が吹けば布は揺れ、光は絶えずその表情を変えていく。衣服は静止した物体ではなく、環境との関係性の中で新たな輪郭を獲得していく存在として映し出される。
現代社会ではあらゆるものが整えられ、均質化されていく。情報は瞬時に共有され、流行は同じ速度で世界を巡る。しかし自然はその流れに従わない。風によって削られた岩。波によって歪められた海岸線。霧によって曖昧になった輪郭。そこには均整ではなく、揺らぎがある。画面越しには伝わらない重さや軽さ、立体と平面のあわいが、この島では静かに立ち上がる。
18世紀の画家ウィリアム・ホガースは、その揺らぎの中に美を見出した。著書『The Analysis of Beauty』の中で彼が「Line of Beauty」と呼んだのは、直線でも円でもない、蛇行する“S字の曲線”だった。それは秩序と混沌のあいだをたゆたう線であり、予測できないからこそ人を惹きつける。スカイ島の風景もまた、その線によって描かれているように見える。風が描いた線。時間が削った線。そして人の手によってつくられた衣服の中に宿る線。私たちはPiczoとともに、その島で時間が残した輪郭を追いかけた。





























































